漢方は日本の伝統医学です。中国から伝わった医学をベースに日本で独自に発展し、江戸時代に完成されました。江戸時代、オランダを通じて入ってきた西洋医学を「蘭方」と称していました。「蘭方」に対して日本の伝統医学が「漢方」と呼ばれるようになったのです。
明治の初めに西洋医学が正式の医学とされてしまったため、漢方は一時期大きく衰退してしまいました。
しかし、昭和の漢方名医・大塚敬節先生(高知県出身)らの尽力により復興し、近年医学教育のカリキュラムにも正式に取り上げられるようになっています。
漢方薬はすぐには効かないと思われている方も多いかと思いますが、そんなことはありません。風邪で使用した際など即効的に効果を発揮します。
古い時代に作られたお薬ではありますが、西洋医薬にはない効果があり、通常の痛み止めが効かない腰痛や、一見不定愁訴と思えるような訴えにしばしば著効します。
古代人の英知にはただ脱帽するばかりです。
漢方の種類は、本当にたくさんあります。
例えば、風邪のひき始め、こじらせたときなどで、それぞれに処方される漢方は違います。
漢方を飲んでみたいけど、なにを飲んでいいかわからない等ございましたらお気軽にご相談ください。
漢方薬は、自然の生薬をもとにして作られています。
天然の有効成分を利用して、体の抵抗力を付け、病気に負けない体を作ります。
自然の生薬をもとにして作られているので副作用が少なく体に優しい利点があります。
漢方は、四診(ししん)という独自の診察を行い処方されます。
四診とは「見る・聞く・嗅ぐ・触る」といった五感をフルに使って患者を診察していく方法です。
その診察によって、一人ひとりの体質や状況に合わせた配合で処方されます。
かぜはウイルスなどが感染することによって起こります。風邪の多くは抗生物質が効かず、対症療法を主体とするのが一般的です
。一方、漢方薬が最も得意としている分野の一つが、かぜなどのウイルス感染症です。古来、漢方薬が急性感染症に対する治療薬として発展した経緯があるからです。
インフルエンザの際に使用するタミフル等を除けば、漢方薬の方が対症療法に終始している現在のかぜ薬より勝っていると言えるでしょう。
かぜの際に使用する漢方薬としては「葛根湯」がよく知られていますが、葛根湯が効くのはかぜのごく一部です。
また、葛根湯は胃腸の弱い方や高齢の方に使うと副作用が出やすく注意が必要です。
かぜの際に使用する漢方薬は多岐にわたり、かぜのステージや患者さんの体力などによって細かに使い分けます。
十分な効果を上げるためには、使用する漢方薬を正しく選択する必要があります。
女性には、月経や妊娠出産、更年期など男性にはない特徴があり、生理痛や生理に関連した頭痛やめまいなどを我慢されている方
は少なくないと思います。
また女性では、ストレスから動悸・のどのつまり感・胸の痛みといった身体症状が起こりやすいとされています。
医療機関を受診し検査をしても異常が認められず、自律神経失調症という病名がつけられたものの、症状が取れないままとなって
いる女性の方をしばしば経験します。
本来、女性に対しては男性への場合とは異なる、よりきめの細かい対応がなされるのが望ましいと思われますが、先に上げたような女性特有の症状に対して現代医学のみでは必ずしも十分に対応できないことが少なくありません。
一方、漢方では女性特有の症状に対して西洋医学とは違った手段(漢方薬)が用意されており、大変有用です。古来、漢方薬は婦人科疾患によく使われており、漢方外来を訪れる方の7割が女性とも言われています。私達が経験した具体例を上げてみます。
元来冷え症で、生理2-3日前から生理中にかけて起こるズキズキとする頭痛を訴えらた女性に漢方薬をお出ししたところ頭痛が起
こりにくくなり、冷えの自覚も軽くなりました。
また、暑がりでがっちり体形のやはり生理前に起こる強い頭痛で来られた方に別の漢方薬をお渡ししたところ、痛みはほぼ消失しました。注意していただきたいのですが、頭痛という同じ症状・同じ病名であっても使用する漢方薬は患者さんによって異なります。これを「同病異治」といいます。漢方では、一人ひとりの体質や病気の状態を見極めながら最適の漢方薬を使い分けてゆきます。
漢方治療はオーダーメイド医療です。
2011年6月に終了したTBSドラマ「JIN〜仁〜」の中で、現代医学を行う主人公と江戸時代の漢方医たちが協力して治療にあたるという場面がありました。時代を先取りした展開だったと思います。
近年、漢方薬が見直され、使用される頻度が増えています。
もしも漢方薬が廃れてしまうことなく、明治時代以後にも西洋医学と共にそのまま残っていたなら、日本の医療は今以上に素晴らしくなっていたのではないでしょうか。漢方では、不定愁訴とされてしまいがちな訴えに対しても、たくさんの薬が用意されています。
患者さんの訴え全てが、どの漢方薬を選択するのかのヒントになります。じっくり話を聴きながら、漢方独自の腹診を行うことでコミュニケーションがぐっと深まります。
漢方を西洋医学と組み合わせることにより、医師・患者双方にとってよりよい関係が生まれるのではないかと思います。
「冷え」は、漢方が得意とするところです。
冷えの漢方治療では、「冷え」を大きく3つの型(全身型・冷えのぼせ型・手足型)に分けて行います。
全身型の冷えは、体全体の冷えで、お風呂で温まると改善される、冷房にあたると悪化するタイプです。典型的な冷えと言えます。このタイプの冷えでは、ブシやカンキョウといったあたためる成分が含まれたお薬を使用します。
次は、冷えのぼせ型です。足は冷えるが、顔はほてる、全身型の冷えとは逆にお風呂で温まるとのぼせて苦しくなるタイプです。本当の冷えではないため、全身型とは異なり、熱をさますお薬を使います。
3つ目の手足型の冷えは、手足の先のほうが中心に冷えるタイプです。血液の循環が悪くなるための冷えで、トウキなど循環を良くする成分を含んだお薬を用います。実際には、3つの型は混在していることもありますが、漢方治療を行う場合、どの型の冷えなのかを区別して行う必要があります。